
はじめに
育児とキャリア、その二兎を追う現実に、日々戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
「仕事はしたい、でも子どもも大切にしたい」。
その思いはどちらも本物だからこそ、バランスを取るのが難しい。
私自身も、保育園のお迎えギリギリのタイミングで電話会議が延びた経験が幾度もあります。
冷や汗、焦り、そして子どもの寂しそうな顔。
あの瞬間、「今の働き方、本当にこのままでいいのか」と自問したのです。
でも、調べてみれば希望の光はあります。
政府の統計では、女性の就業率は54.2%、25~44歳の女性では79.8%にも達し、育児休業取得率も男女ともに年々上昇中。
制度と意識、どちらも確実に変わってきていると感じます。
この先は、数字の裏付けと実体験に基づいた、リアルな働き方の模索と提案をご紹介します。
同時に、「両立」とは単なる効率化の話ではありません。
自分自身の価値観の再確認や、社会の変化に対する柔軟な適応力も必要になってきます。
過去の常識が現在の障害になっていることもあるからこそ、今こそ問い直すべき時です。
女性就業率54.2%・15〜64歳女性74.1%の実態を読む
就業者数は3,082万人、女性就業率54.2%に上昇傾向
ぎゅうぎゅうの通勤電車、ふと見渡せば同世代の女性が目立ちます。
それもそのはず、総務省の2023年労働力調査によると、女性の就業者数は過去最多の3,082万人。
就業率は54.2%と、10年前と比べて約6ポイント上昇しています。
特に15歳〜64歳に限ると、就業率は74.1%と高水準。
「働くことはもう特別ではない」、そんな風潮が定着してきました。
それでも、毎朝子どもを送り出して職場に向かう中で、ふと感じる疎外感や、周囲の視線にストレスを感じた経験もあります。
“数字の裏側にある声”を、もっと丁寧に拾う必要があると実感しています。
出産後に再就職した友人が、「制度はあるけど、実際は気まずい」とポツリ。
時短勤務への理解、突発的なお迎え対応に対する配慮など、職場の“温度差”が壁になることも多いのです。
とはいえ、流れは確かに前進している。
企業の中には、育児中の社員向けにフレックスタイムや在宅勤務を導入し始めた例も少なくありません。
一部の自治体では、就業支援セミナーや女性向けキャリアカウンセリングを実施するなど、包括的な支援も拡大しています。
25〜44歳女性就業率は79.8%、M字カーブが緩和傾向
以前は「M字カーブ」という言葉が象徴だった、女性の就業率。
結婚・出産期に退職が増え、30代でいったん低下、40代で回復するM型のグラフ。
しかし、2022年時点で25〜44歳の女性就業率は79.8%まで上昇。
M字は台形へと近づいています。
この変化には、保育所の整備や両立支援制度の拡充が影響していることは明らかです。
待機児童ゼロを目指す自治体の施策や、企業主導型保育所の普及などが後押ししています。
私も保育所の一次選考で落ちたときは頭が真っ白になりました。
でも、民間支援や認可外施設の柔軟さに救われた経験があります。
そのとき、見学先の保育士さんが言ってくれた「無理しないで大丈夫」という一言に、涙が出そうになったのを覚えています。
働きたい気持ちと、制度の進化がようやく噛み合ってきた感覚です。
とはいえ、就業継続の心理的なハードルはまだ根深い。
「母親は家にいるべき」そんな空気が、今も職場に残っている場所もあるのです。
固定観念との戦いは、制度ではなく“文化”の壁かもしれません。
(出典:男女共同参画白書 令和5年版(内閣府))
完全失業率は男女平均2.5%、女性2.4%、男性2.7%と改善
2023年の完全失業率は、男女平均で2.5%。
女性は2.4%、男性2.7%と、男女差も縮小しています。
一見「雇用は安定している」とも読めます。
でも、安定の中身が問題です。
女性就業者の半数近くが非正規雇用。
時間給、賞与、昇給の壁。
「いま仕事がある」だけでは安心できないというのが、多くの家庭の現実ではないでしょうか。
私もパート契約時代、月末になると光熱費の請求書に怯えていました。
ボーナスがない、年末調整の申告で手間が増える、小さな不公平感の積み重ねが、モチベーションを削ぎます。
雇用の“質”が問われる時代に入ったのだと、つくづく実感します。
一方で、副業解禁やフリーランス支援の動きも広がってきています。
企業だけに頼らない働き方の模索が始まりつつある今、制度の“隙間”を自分なりに埋める発想が求められているのかもしれません。
数字の裏側にあるのは、収入・働き方・家庭のバランスという、もっと複雑な“生活”そのものです。
今後の統計は、数だけでなく質の変化にも目を向けたいところです。
育児休業取得率86.6%女性・40.5%男性の支援制度活用
女性の取得率86.6%、前年比2.5ポイント上昇
「育休って実際どのくらい取れてるの?」
そんな疑問を抱えたまま妊娠した友人がいました。
会社の制度としては整っていたけれど、空気的に取りづらい。
それでも勇気を出して上司に伝えたとき、あっさり「いいよ、当たり前だろ」と言われて、拍子抜けしたそうです。
2022年度の厚生労働省の調査によれば、女性の育児休業取得率は86.6%。
前年から2.5ポイント上昇し、着実に利用が広がっています。
数字だけ見れば高水準。
でも、「取るのが当たり前」になってきたのは、ごく一部の企業に過ぎないのが現状です。
地域や業種によっては、まだまだ“形式的”にしか機能していないケースもあります。
制度を整えていても、実際には周囲の空気で断念する人も少なくありません。
「休んでいいよ」と言われても、実際に取得するには勇気がいるという声も多く聞きます。
さらに、復帰後の扱いや昇進への影響を不安視する声も根強くあります。
ある知人は、育休から復職した際に「戦力外」のような扱いを受け、結局退職しました。
このような現実は、制度と実態とのギャップを如実に物語っています。
だからこそ、文化的な受容の広がりが不可欠なのです。
つまり、制度の存在だけで満足せず、文化的な浸透までが重要だということです。
意識のアップデートと制度の有効活用がセットで進まない限り、数字だけが独り歩きしてしまうリスクがあります。
社会全体での価値観の再構築が求められています。
(出典:令和4年度雇用均等基本調査(厚生労働省))
男性の取得率40.5%、過去最高で前年比+10.4ポイント
数年前なら、男性の育休取得なんて「レアケース」でした。
私の同僚も当時、育休を申請したら「偉いな」と言われたそうです。
称賛のようでいて、その言葉には“特別感”が含まれていた気がします。
ところが、今は変わってきています。
厚生労働省の統計では、男性の育児休業取得率は40.5%に達しました。
前年比で10.4ポイントも上昇し、これは過去最高の数値です。
この背景には、「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度の導入があります。
制度開始以降、企業の対応や社内の空気も変化を見せ始めているのです。
私の知人も、この制度を利用して1ヶ月間しっかり育児に関わることができたと言っていました。
家族との関係が深まり、育児の大変さと楽しさの両方を知る貴重な時間だったと語っていました。
とはいえ、取得日数の実態を見れば、平均13.0日。
「一応取った」というレベルから、「ちゃんと関わる」段階への移行は、まだこれからです。
短期間の取得では、真の育児参加とは言いがたいという指摘も増えています。
さらに、職場の上司や同僚の理解が不十分なままでは、形式的な取得にとどまってしまうことも多いのです。
育児に参加する男性が増える一方で、「職場で浮いてしまう」と感じるケースもあります。
制度の数字と生活実感のギャップをどう埋めていくかが問われています。
持続可能な働き方として、男性の育休を“日常化”する視点が求められています。
(出典:令和4年度雇用均等基本調査(厚生労働省))
産後パパ育休導入で制度利用企業割合が71.2%に上昇
「うちの会社、パパ育休って対象?」
そんな声を職場で聞いたことがあるかもしれません。
制度ができても、それが周知され、運用されるかどうかは別問題。
でも、少しずつ確実に変化は起きています。
2023年時点で、産後パパ育休を導入している企業の割合は71.2%に達しました。
まだ3割近くは未対応ですが、前年よりも8ポイント以上の増加です。
制度導入が進んだ背景には、国の助成金制度や指導監査の強化があります。
制度の活用状況が企業評価の一部として可視化されるようになったことも後押しになっています。
職場でも「男性も育児に参加するのが当たり前」という意識が広まりつつあるのを感じます。
私自身、最近の社内会議で“男性の育休明け復帰報告”が普通に行われているのを見て、時代の流れを肌で感じました。
さらに、企業の採用活動においても「子育て支援制度あり」が強みになるケースが増えています。
若年層の就職希望者は、福利厚生やライフワークバランスへの意識が高まっており、企業側も対応せざるを得ない状況です。
制度の普及は、社会の空気を変える触媒になるのです。
働き方改革の文脈の中で、育休制度の導入は「選ばれる企業」への第一歩とも言えるでしょう。
キャリア維持と自己発信で離職率を抑制・成長を促進
第1子離職率削減と就業継続支援の統計的効果
「産んだら辞めるしかないのかな……?」
そんな不安を、出産前に私も抱いていました。
一度離職すると再就職が難しい。
それは現実として根強く残っている課題です。
実際、厚生労働省の調査によると、第1子出産前後に離職する女性の割合は、過去には約7割にも及びました。
近年は少しずつ改善され、2021年時点では約46.9%にまで減少。
とはいえ、半数近くが職場を離れるという現実には変わりありません。
(出典:厚生労働省 21世紀成年者縦断調査)
私の同僚は、産休後の復帰を迷った末に離職。
「もう一度キャリアを築けるか不安だった」と話していました。
彼女のような声は少なくなく、多くが“家庭を選んだのではなく、職場が選択肢を奪った”と感じています。
それだけに、制度と風土の両面で就業継続を支える体制の強化が求められます。
企業側も、優秀な人材を手放さないためには柔軟な雇用形態や役割設計がカギとなります。
「戻ってこれる」という安心感こそ、長期的な戦力確保の要です。
また、社内での育休取得経験者のロールモデル可視化も非常に重要です。
制度を使った人の声を社内報で発信したり、経験談を共有する場があると、後に続く人の心理的負担を和らげられます。
個人の判断に任せるのではなく、職場全体での「継続しやすい空気」を醸成することが不可欠です。
中には、復帰後に子育てを理由に「軽い仕事ばかり回されている」と感じる人もいます。
仕事の割り振りや評価基準の見直しも、継続支援には欠かせない要素となっています。
時間管理・自己アピールが職場評価に直結する理由
「誰にも気づかれずに頑張ってるのが一番つらい」
これは以前、保育園ママ友から聞いた言葉です。
在宅ワーク、時短勤務、フレックス……。
柔軟な働き方が広がる一方で、可視化されにくい努力が増えました。
上司に見られていないから、同僚との関わりが少ないから。
そんな理由で評価を得られず、やがてモチベーションを失う例もあります。
実際のところ、「成果を見せる技術」はますます重要になっています。
定量的な進捗報告や、社内SNSでの共有、プロジェクト完了後のふりかえり資料の提出など。
自己アピールは「自慢」ではなく、「信頼の積み重ね」です。
私もかつて、自分の役割が見えにくくなっていた時期がありました。
でも、「資料まとめありがとう」「助かった」と言われるよう、こまめに共有するようにしたところ、自然と評価が変わりました。
伝え方ひとつで、自分の立ち位置は大きく変わるのです。
また、時間の使い方そのものにも意識を向ける必要があります。
限られた勤務時間内で最大の成果を上げるには、「重要な仕事に集中する力」が問われます。
朝イチでタスクを見直す習慣をつけたり、会議時間を半分に削る工夫も効果的です。
働く時間の“質”を高めることが、結果的に評価に直結します。
さらに、チーム全体のアウトプットとして成果を共有することで、貢献感を増やすことも可能です。
育児中の社員が「サポートされる存在」ではなく「結果を出す存在」として認識されるには、戦略的な自己発信が欠かせません。
グローバル視点や英語力強化が競争力を高める道筋
「子育てしてたら英語なんてムリ」
そう思っていた私が一念発起して始めたのが、朝の20分オンライン英会話。
眠い目をこすりながらパソコンを開くのは大変ですが、1年続けたら業務で海外クライアント対応を任されるようになりました。
英語力は、今や専門職に限らず広く求められるスキルです。
厚生労働省の調査でも、グローバル人材育成は国内企業の大きな課題とされています。
(出典:厚生労働省 グローバル人材に関する調査)
単に言語としての英語だけではなく、異文化理解や多様性への配慮も含まれます。
こうした力は、今後ますます求められるビジネススキルとなるでしょう。
家庭と仕事を両立する中でも、成長への余地は確実に存在します。
「今の自分にできること」を小さく積み上げることが、未来の選択肢を大きく広げてくれるのです。
最近では、子育て中のママ・パパ向けに特化した英語学習アプリや、短時間の動画教材も増えています。
1日10分のインプットでも、半年経てば確実に積み重なっていきます。
また、育児休業中をスキルアップ期間と捉えて、資格取得やリスキリングに取り組む人も増えています。
時間の制約を言い訳にせず、“できる範囲で挑戦する”姿勢が、のちの大きな差につながるのです。
国際的なプロジェクトや外資系企業との接点が増える今、グローバルな視点を持つこと自体が武器になります。
その一歩を踏み出すかどうかは、自分次第なのだと実感しています。
まとめ
キャリアと子育てを両立するというテーマは、多くの人にとって切実な課題です。
社会制度の整備が進んでいるとはいえ、その制度が実際に機能しているかどうかは、職場ごとの文化や空気感に大きく左右されます。
特に女性にとって、出産や育児は「キャリアの中断」ではなく「ライフステージの一部」として捉えられるべきです。
しかし現実には、いまだに多くの人が「選択肢を狭められている」と感じています。
一方で、育休制度の取得率が上昇し、男性の育児参加も広がってきたことは大きな前進です。
企業や自治体の取り組みも着実に成果を上げており、社会全体の意識も変化しつつあります。
とはいえ、数値だけでは見えてこない“空気”の変化こそが、より本質的な進化なのだと思います。
自己発信の力、時間の使い方、そして異文化理解や語学スキルといった要素も、キャリア形成において重要な武器となります。
今の働き方に不安やモヤモヤを感じている人こそ、自分の声を小さくでも発し続けることが必要です。
私自身も、迷いながら、何度も立ち止まりながら、それでも前に進もうと決めた瞬間がありました。
環境がすべて整うことはありません。
でも、自分の小さな選択が、次の道を開いてくれます。
誰かがつくった“正解”ではなく、自分なりの“納得解”を探す旅が、今まさに始まっています。
今ある制度を活かし、自分らしいキャリアと家庭のかたちを少しずつ築いていく。
その積み重ねこそが、未来の「普通」を変えていくのだと思います。