
はじめに
70歳を迎えると、何となく「この先は惰性で過ごすだけ」と思ってしまう瞬間があるかもしれません。
私自身、退職後に感じたのは「自由な時間」と「漠然とした不安」の共存でした。
特に家計簿の数字を見つめては、「これで本当に足りるのか?」と夜も眠れないこともありました。
とはいえ、老後の暮らしはデータをもとに「見直す」ことから始まります。
総務省の調査によれば、高齢夫婦無職世帯の平均支出は月23.6万円。
一方で、年金だけでは平均2.2万円の赤字が出ると言われています。
しかし、ここで悲観するのは早いのです。
視点を変えれば、ムダな支出を削り、生活の質を保つ工夫はたくさんある。
たとえば、私が取り入れた「持たない生活」。
クローゼットを整理し、毎日の献立をシンプルにしただけで、月に2万円以上節約できました。
お金だけでなく、心の余白までもが広がった感覚は、何とも言えず心地よいものでした。
この先の人生、老後こそが本番だと思いませんか?
さあ、数字と心を整えて、もう一度「自分の人生」に火を灯しましょう。
老後の生活費を見直し安心と満足を手に入れる
公的年金の平均受給額と実支出の差から見る生活実態
「年金だけで生活できるのか」——多くの方が抱えるこの疑問。
実際、総務省の「家計調査報告(家計収支編)2023年」によると、
高齢夫婦無職世帯の月平均支出は23.6万円。
対して、年金などの実収入は21.4万円にとどまり、月々2.2万円の赤字が出ているのです。
たった2万円、されど2万円。
私も退職した当初、この差額に気づかずに暮らしていたら、貯金の減りに焦り始めました。
この赤字は、旅行や贅沢な食事で発生するものではありません。
日常の「なんとなくの出費」——たとえばコンビニの買い物やサブスクの見直し忘れ、
そういった積み重ねでじわじわ膨らんでいくのです。
まずは家計の全体像を「数字」で見える化すること。
これが、老後の安心を作る第一歩です。
「足りない」という漠然とした不安を、「これだけ減らせばOK」という明確な目標に変えてみませんか?
支出の内訳と支出削減の優先順位を明確化する方法
「どこから削ればいいのか、分からない……」
これは多くの人がつまずく壁です。
私も最初は同じでした。
光熱費? 通信費? 食費? その場しのぎで減らしても、すぐに元に戻ってしまう。
だからこそ、支出を「分類」するのが先決です。
まずは固定費(家賃・保険・通信費)と変動費(食費・交際費など)を分ける。
その上で、固定費は一度見直せば効果が続く「削減効率の高い領域」だと気づくはずです。
私の場合、スマホを格安SIMに変えただけで月4,000円の削減に。
それだけで年間48,000円、ちょっとした国内旅行に行けてしまいます。
一方、変動費は「節約しすぎると息苦しい」ので、工夫とバランスが大切。
「たまの外食は楽しみ」と割り切りつつ、普段の食材はまとめ買いでロスを防ぎました。
あなたも、家計を「分類」して見直すだけで、思った以上に生活が整うかもしれません。
ミニマリスト思考で生活コストを月2万円以上圧縮する実践例
「モノが少ない暮らし=我慢」だと思っていませんか?
実のところ、私は真逆の感覚を味わいました。
「使ってないけど高かったから捨てられない」家具や服に囲まれていた数年前。
ある日ふと、「これらが心のノイズになっている」と気づき、手放す決意をしました。
結果、電気代が減り、不要な買い物も激減。
月に2万円以上も支出が圧縮され、かつ部屋も気持ちもスッキリ。
たとえば冷蔵庫の中を見てください。
賞味期限切れの調味料が並んでいたら、それはお金のムダでもあります。
今あるもので「工夫して楽しむ」力が、ミニマルライフの本質です。
また、ミニマリズムには「生活の主導権を自分に取り戻す」力もある。
必要なものを厳選し、大切に使う。
それが、満足度を上げる最短ルートなのかもしれません。
あなたも、どこかに眠る“使われていないもの”に、気づいていますか?
健康と生きがいを両立させる暮らし方
趣味活動が認知症リスクを40%下げる科学的根拠とは
ぼんやりテレビを眺めていたある日、ふと「この時間、本当に満たされてるのか?」と自問したことがあります。
手持ち無沙汰のまま時間だけが過ぎていく——そんな感覚は、老後にこそ避けたいもの。
実は、趣味や知的活動が脳を刺激し、認知症のリスクを下げることは複数の研究で明らかにされています。
国立長寿医療研究センターの報告によれば、趣味活動を継続して行っている高齢者は、そうでない人と比べて認知症発症率が約40%低かったとされています。
(出典:趣味活動と認知症発症リスクとの関連|国立長寿医療研究センター)
私自身、定年後に始めたガーデニングが思わぬ集中力と癒やしを与えてくれました。
毎朝、葉の色や水加減に気を配るだけで「脳が働いている感覚」があるんです。
時には失敗もあります。
植え替えを忘れて枯れてしまったバジルの鉢を見て、しょんぼりした日もありました。
それでも、次の日には別の苗を買ってまた挑戦する気になれるのが不思議です。
「新しいことを覚えるのは大変」と思うかもしれませんが、最初は真似でも十分。
最近は、絵手紙や塗り絵、パズルなど、手軽に始められる趣味も増えています。
また、学習系のアプリやYouTube講座を使えば、自宅でも知的好奇心を満たせます。
どうせ老後を生きるなら、ただの時間潰しじゃなく“意味ある時間”にしてみませんか?
自分の好きなことに夢中になっている時間こそ、人生の宝物になるのではないでしょうか。
通いの場参加で健康寿命が延伸する社会的エビデンス
「家にいるだけじゃ体がなまる気がする……」そんな声、よく耳にします。
実際その通りで、社会的つながりの希薄さは、運動不足と同じくらい健康に影響を与えると言われています。
厚生労働省の「通いの場」推進事業では、地域住民が定期的に集まり、体操や脳トレ、会話を通じて心身の活性化を図っています。
令和5年度時点での参加者は全国で約448万人。
参加者の多くが「気分が前向きになった」「生活に張りが出た」と実感しており、継続率も高いのが特徴です。
私も地域の健康教室に半年間参加しましたが、終わったあとのおしゃべりが実は一番の楽しみでした。
思いがけず共通の趣味を持つ人と出会い、後日一緒に市民講座に申し込むことに。
小さな集まりから始まる関係が、どれほど生活の彩りになるかを痛感しました。
たとえば、誰かに「最近どう?」と聞かれるだけで、心が動き出すんですよね。
買い物のついでに立ち寄れる、そんな場所があるだけで生活に張りが出ます。
一人でいる時間が好きな人でも、時には誰かの声が恋しくなる日もあるはずです。
つながりを持つこと——それが老後の活力に直結するのです。
あなたにも、気軽に足を運べる“居場所”がきっとあるはずです。
小さな挑戦がもたらす幸福度と自己肯定感の向上効果
「もう年だから」「新しいことは無理」——そんな言葉を耳にすると、胸がぎゅっと締めつけられます。
私はかつて、絵を習いに行った教室で70代の女性に出会いました。
「最初は筆が震えて思うように描けなかった」と笑っていた彼女が、数ヶ月後には作品展に出展していたのです。
人間って、本当に変われるんだなと感じた瞬間でした。
心理学の調査でも、「新しい挑戦をした高齢者」は、幸福度・自己効力感の両方が高い傾向にあることが示されています。
挑戦の規模は関係ありません。
スーパーで新しい食材を買ってみる、散歩ルートを変えてみる、それも立派なチャレンジです。
私自身も、はじめてZoomを使った時は戸惑いましたが、何度か試すうちに慣れて、今では遠方の友人とも気軽に話せるようになりました。
失敗しても笑える環境——それが今の私たちの強みなのかもしれません。
時には「こんなこと、誰が見るの?」と思いながらも、日記を書いてみたり、スマホで写真を撮ってみたり。
そんな小さな試みが、心に灯をともしてくれます。
「もう遅い」は幻想です。
やってみたいと思ったときが、あなたの“はじまり”です。
今日、何を始めてみますか?
人とのつながりで孤独を解消し人生を豊かにする
44.7%が高齢者世帯:家族再構築が孤立を防ぐ鍵になる
気がつけば、一日誰とも話さずに終わっていた——そんな日、ありませんか?
実際、総務省の「令和5年版高齢社会白書」によれば、65歳以上の高齢者がいる世帯は全体の44.7%を占めています。
つまり、約2世帯に1つは高齢者の暮らす家庭という現実です。
しかしながら、その中には一人暮らしの方も多く、家族との関係が疎遠になることで、孤独感が深まるケースが後を絶ちません。
たとえば子や孫が忙しくなり、日常的なやりとりが減ってしまうことはよくあります。
そのちょっとしたすれ違いが積み重なって「話すきっかけ」がなくなってしまうのです。
私もかつて、母との連絡が週1回に減っていた時期がありました。
ある日、電話の向こうから聞こえた「何も変わらないよ」という一言に、胸がズキンと痛んだのを今も覚えています。
それからは、電話だけでなく手紙や写真を送るようにしました。
買い物帰りにちょっと顔を出す、それだけでも母の笑顔が違って見えるようになりました。
ちょっとしたやりとりでも、関係は少しずつ温まっていくんですね。
また、離れて暮らす家族とつながるために、LINEやビデオ通話を活用している人も増えています。
最初は不慣れでも、教えてもらいながらやってみる価値はあります。
家族の再接続は、一気に距離を詰めるより「回数」で育まれるもの。
「久しぶり」より「またね」が増える関係を、もう一度築いてみませんか?
(出典:令和5年版高齢社会白書|内閣府)
地域活動参加者の約7割が「役割を実感」と回答した理由
「もう家庭も職場もない。自分の居場所ってどこだろう……」
そんな風に感じたのは、退職してから半年が過ぎたころでした。
地域の掲示板で見つけたボランティア募集の案内に、なんとなく応募したのがきっかけ。
初日は緊張で言葉も出ませんでしたが、2回、3回と通ううちに名前を覚えられ、「〇〇さん、今日もありがとう」と声をかけられるように。
その瞬間、「ここに居ていいんだ」と思えたのです。
全国の地域活動に参加している高齢者のうち、約7割が「自分の役割を実感している」と回答している調査結果もあります。
(出典:地域共生社会の実現に向けた包括的支援体制構築事業報告書|厚生労働省)
私の周りでも、地域のラジオ体操に毎朝参加している方が「顔を見せるのが自分の役目になった」と笑っていました。
掃除や配膳、子どもの見守り——どんな小さなことでも、人の役に立てる場所はあります。
たとえば、ゴミ拾いでも配膳でも、感謝の言葉が返ってくるだけで人は前向きになれます。
「ありがとう」と言われるだけで、体の中がぽっと温かくなる感覚、経験ありませんか?
活動の大小ではありません。
「やってみたい」という気持ちが第一歩になるんです。
また、そうした活動を通じて新しい友人ができることもあります。
会話が生まれ、笑いが生まれ、それが習慣になっていく——その循環が、心の安定を育ててくれるのです。
経験と知識を次世代に継承する社会的意義と幸福感の関係
「昔はね……」と語り出すと、若い人はつまらなさそうにする——そんな思い込みに縛られていませんか?
でも、本当は違います。
若い世代は、「なぜ今こうなっているのか」を知ることで、社会との接点を感じるのです。
私が地域の子ども向け講座で昔の農具を紹介したとき、「スマホしか知らない子が目を輝かせていた」のを今でも思い出します。
体験や知識を言葉にして伝えることは、単なる情報共有ではなく、「生きた文化の継承」になる。
実際、世代間交流に参加した高齢者の中には、「生きがいを感じた」「若者から刺激を受けた」と答える人が多数います。
これは一方通行ではなく、双方向の幸福なのです。
(出典:世代間交流の推進に関する調査研究報告書|国立社会保障・人口問題研究所)
伝えることで、自分自身が過去を振り返り、気づきを得るという側面もあります。
「あの時は辛かったけど、今につながっているな」と感じる場面が、言葉にすることで浮かび上がってくるんです。
また、経験を語る中で、若い世代との対話が生まれ、新たな発見があることも。
「そんな時代があったんですね!」と驚かれることで、自分の人生の重みを改めて認識する瞬間にもなります。
あなたが語るその言葉に、誰かが救われるかもしれません。
経験こそ、あなただけの“財産”。
その価値に、今こそ光を当ててみませんか?
まとめ
老後の暮らしは、静けさと穏やかさだけで成り立つものではありません。
時に胸がぎゅっと締めつけられるような孤独に襲われたり、誰にも必要とされていないような気がして涙が出そうになることもあるでしょう。
しかし、人とのつながりという一本の糸が、そうした不安をそっと包み込んでくれます。
家族との小さなやりとり——それが積み重なることで、心は少しずつほぐれていきます。
地域の活動で見つける「ありがとう」は、あなたの存在そのものへの肯定の言葉になります。
また、あなたが培ってきた経験や思い出は、次の世代にとっての希望や気づきとなり得るのです。
誰かのために何かをした日、自分の声に耳を傾けてもらえた日、そういう瞬間が生きる力に変わっていきます。
人との関わりは、心を育て、生活にリズムを生み、人生に再び火を灯してくれるものです。
「もう遅い」なんてことはありません。
あなたが今日踏み出す一歩が、思っている以上に遠くまで届くかもしれません。
声をかける、出かけてみる、語ってみる——そのどれもが、確かな未来につながっていくのです。
今のあなたにできることは、小さいけれど、尊いことです。
だからこそ、あきらめずに、やわらかな気持ちで日々を迎えていきましょう。
人生は、最後まで、豊かさで満たすことができます。