はじめに
「自分には価値がない」と感じてしまう瞬間、誰にでもあるのではないでしょうか。
2023年の内閣府調査によると、日本の若年層の約68.9％が「自己肯定感が低い」と回答しています（出典：我が国と諸外国の若者の意識に関する調査｜内閣府）。
それは単なる気分の問題ではなく、うつ傾向や孤独感の強化、意思決定の停滞にもつながる深刻な社会課題です。
自己肯定感が低い状態が続くと、他者との比較や評価に過敏になり、行動すること自体が怖くなることもあります。
私自身もかつて「このままでいいのか？」と自問を繰り返し、なかなか前に進めなかった時期がありました。
モヤモヤとした感情に振り回され、SNSで人と比べて落ち込んだ日も数知れません。
「何かを変えたいけれど、何から始めればいいのかわからない」そんな焦りにも似た感覚に支配されていたのです。
しかし、ある3つの習慣を意識してから、思考のモヤが少しずつ晴れ始めたのです。
この記事では、そんな実体験とともに、エビデンスに基づいた「不安や孤独を乗り越える具体策」をご紹介します。
ふと立ち止まりたくなるような時こそ、内面に目を向けるチャンスかもしれません。
心の奥にある「本当の自分」と向き合う時間を、少しだけ取ってみませんか？
自己肯定感が低い人のうつ傾向リスクは3倍以上
自己肯定感が低い日本人は全体の68.9％
静かな電車の中、窓に映る自分の顔を見て「このままでいいのかな」とぼんやり思ったことはありませんか？
それはあなた一人の感覚ではありません。
2023年に内閣府が実施した調査によると、日本の13歳～29歳の若者のうち、自分に「満足している」と答えた割合は29.8％にとどまりました（出典：我が国と諸外国の若者の意識に関する調査｜内閣府）。
つまり、約7割近くの若者が自己肯定感の低さに悩んでいるという実情です。
この数値は、同様の質問に対してアメリカ（75.9％）やドイツ（59.2％）と比べて著しく低い水準であり、日本独自の社会的課題ともいえるでしょう。
社会全体が「失敗を許容しない雰囲気」に包まれていることも、背景にあるのかもしれません。
一見元気そうに見える人でも、心の中では「自分なんて…」という思いを抱えているのです。
私もかつて、職場でどんなに成果を出しても「どうせ誰も評価してくれない」と心のどこかで感じていました。
拍手を受け取っても素直に喜べない。
そんな自分に嫌気がさしていたことを、今でも覚えています。
他人の視線に敏感になり、ほんの些細な言葉に深く傷ついてしまう日々でした。
それでも、「自分を取り戻したい」と思い、少しずつ行動を見直し始めたのです。
自己肯定感が高い人はストレス耐性が平均2.6倍
とはいえ、希望がないわけではありません。
国立精神・神経医療研究センターの研究によると、自己肯定感が高い人は、そうでない人と比べてストレスに対する耐性が約2.6倍高いという結果が出ています（出典：国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所）。
自己肯定感があると「多少の失敗も自分の価値とは関係ない」と思えるようになるため、ストレスによる影響を受けにくい傾向があるのです。
言い換えるなら、自己肯定感は「心の免疫力」とも言えるでしょう。
また、ポジティブな自己評価を持つことで、他者の意見に必要以上に左右されなくなります。
実際、私は毎晩5分だけ「今日できたこと」をノートに書く習慣を続けています。
最初は「何も書くことないよ…」とため息ばかりの日もありましたが、次第に「案外ちゃんとやれてるじゃん」と感じる場面が増えていきました。
たった5分の自己対話が、ストレスをやわらげ、翌朝の気分にじわっと効いてくるのです。
「私って意外と悪くないかも？」そんなふうに思えた日は、自然と姿勢もピンと伸びる気がします。
誰かに認められることも大切ですが、自分で自分を認められるようになると、日常が少しずつ穏やかに変化していきます。
心の声に耳を傾ける時間が、想像以上に大きな変化を生むこともあるのです。
自分の価値観を定義することが意思決定力を高める
「何が正解か分からない」社会の中で、自分の判断軸を持つことは難しく感じられるかもしれません。
でも実は、自分の価値観を言語化するだけで、日々の迷いがぐっと減ることもあります。
内閣府が実施した別の調査では、「自分の価値観を理解している人ほど、人生の選択に自信を持てる」と回答した割合が全体の73.5％に上ったと報告されています（出典：内閣府若者の意識調査）。
価値観がはっきりしていれば、選択肢に迷ったときでも「これは自分らしくない」と切り捨てる判断がしやすくなるのです。
「これは本当にやりたいことなのか？」「誰かの期待に応えていないか？」と、自分に問いかける習慣が判断力を鍛えてくれます。
私自身、かつては「他人の期待に応えなきゃ」という想いが先行して、自分の意思を後回しにしていました。
けれど、自分が何にワクワクし、何に違和感を覚えるのかを見つめ直してからは、断ることも怖くなくなったのです。
決断に迷ったとき、ノートに「これは自分の大事にしていることと合っているか？」と書き出すだけでも、判断が一気にクリアになることがあります。
「自分の基準」があるって、こんなに安心するものなんですね。
さらに、その基準があることで、将来の目標設定も明確になります。
誰かの人生をなぞるのではなく、自分の歩幅で生きる土台が整うのです。
SNSを1日3時間以上使う人は精神疲労のリスクが1.8倍
SNS利用時間と感情疲労の関連が国調査で判明
なんとなく開いたSNSのタイムライン。
楽しそうな写真、成功談、華やかな日常が次々と流れてきます。
ふと気づくと、30分、1時間と時間が経過し、心がざわついていた――そんな経験はありませんか？
一見すると情報収集や気晴らしのつもりでも、脳と感情は知らず知らずのうちに疲弊しているかもしれません。
実際、情報通信研究機構（NICT）が行った「情報メディアの利用とストレスに関する調査」では、SNSを1日3時間以上利用する人は、1時間未満の人と比べて感情的疲労のリスクが約1.8倍高いことが報告されています（出典：情報メディアの利用とストレスに関する調査｜情報通信研究機構）。
その上、SNSを多用する人ほど「自分は幸せではない」と感じる割合も高いという結果が別の調査でも示されています。
私も一時期、寝る前の“ながらSNS”が習慣になっていて、起きたときにどっと疲れを感じる日が続いたことがあります。
スマホを閉じても、心がざわついたまま。
「何もしてないのに、なぜこんなに疲れてるんだろう」と疑問でした。
画面の向こうの誰かと比べ続けることで、無意識のうちに自分をすり減らしていたのです。
たとえ情報の洪水に巻き込まれても、私たちの心には限界があるのです。
情報遮断習慣のある人は不安スコアが平均20％低下
「SNSが疲れる」と感じる人は多いですが、全てを断つ必要はありません。
重要なのは、自分に合った「情報遮断のルール」を持つことです。
総務省が発表したデジタル・デトックスに関する報告書では、SNSの利用を1日2時間未満に制限した人たちが、1カ月後に感じる不安スコアが平均20％低下したという調査結果があります（出典：情報通信白書 令和5年版｜総務省）。
さらに、1週間に1日でも「SNSに触れない日」を設けることで、感情の安定度が向上したというユーザーの声も多く報告されています。
私の場合、夜9時以降はスマホを別室に置くというルールを作ってから、睡眠の質が改善し、気持ちの浮き沈みが減りました。
最初は落ち着かなくてソワソワしましたが、数日もすれば、画面を見なくても安心できる時間が戻ってきたのです。
次第に、寝る前にお気に入りの本を読む習慣も戻り、朝の目覚めがスッキリと変わった気がしています。
自分にとって何が「過剰」で、何が「必要最低限」なのかを見直すだけでも、気持ちがずいぶんと軽くなるかもしれません。
まるで空気が澄んでいくように、心の中も静けさを取り戻せたのです。
判断力維持には毎日の内省時間20分が効果的
情報に振り回される感覚が強いときこそ、自分の中に戻る時間が必要です。
東京大学大学院教育学研究科の研究によれば、毎日20分の内省を行っている人は、そうでない人に比べて自己決定感と満足度がともに高く、判断力を維持する効果が期待できると報告されています（出典：自己内省と心理的健康に関する研究｜東京大学大学院教育学研究科）。
私も朝のコーヒーを飲みながら「昨日、どんな選択をしたか」「本当はどう感じていたのか」を手帳に書くようにしています。
正直、眠い日や面倒な日もあります。
でも、少しだけでも自分と向き合う時間があると、他人の発信に左右されにくくなる実感があるのです。
誰かの言葉よりも、自分の声を聞くほうがよほど難しい――そう感じることもあります。
それでも、続けることで少しずつ思考が整理され、気持ちが落ち着いてくる瞬間が訪れます。
SNSの波にさらわれる前に、自分の足元を確認する。
その20分が、心のバランスを保つ大きな支えになると感じています。
内省の時間は、他人との比較ではなく、自分の進みたい方向を思い出すための大切な時間なのです。
信頼できる人間関係がある人は自己効力感が2.3倍に向上
支援ネットワークの有無で行動力に大きな差
ひとりで抱え込んでいると、どんな些細なことも重く感じるものです。
でも、信頼できる人がひとりでもそばにいるだけで、不思議と「やってみようかな」という気持ちが湧いてくることはありませんか？
思い切って挑戦しようと思えた背景には、必ずといっていいほど誰かの支えが存在していたりします。
実際、国立社会保障・人口問題研究所が実施した調査では、支援ネットワークのある人は、ない人に比べて自己効力感（物事をやり遂げられるという感覚）が2.3倍高い傾向にあると示されています（出典：生活と支え合いに関する調査｜国立社会保障・人口問題研究所）。
この「支えられている感覚」は、心の安定や前向きな姿勢に直結しているとも言えるでしょう。
私も仕事の悩みを誰にも相談できずにいた時期、何をするにも腰が重くなっていました。
自分だけが取り残されているような孤独感にさいなまれ、やる気も次第に失われていったのを覚えています。
でも、たった一言「大丈夫？」と声をかけてもらった日から、気持ちが少しずつ前向きになったのです。
誰かに関心を持ってもらえること、その事実が力になると感じました。
自分の存在を無条件に肯定してくれる人の存在は、何よりの原動力になります。
そして、自分もまた誰かの「支え」になれるかもしれないという意識が芽生えると、行動に自信がついてきます。
信頼は、受け取るだけでなく、与える側になることでさらに強化されるのです。
不要な関係の継続がストレスの原因になる理由
一方で、「この人とはもう合わないな」と感じていながらも関係を続けていると、心がじわじわと疲れていくことがあります。
社会的つながりは大切ですが、すべての人間関係が自分にとってプラスに働くとは限りません。
むしろ、一部の関係は心のエネルギーを静かに削り続ける「見えない負荷」になっていることもあるのです。
厚生労働省のメンタルヘルス調査では、ストレス要因の上位に「人間関係の悩み」が常に挙がっており、不要な関係の継続は精神的な負担になるとされています（出典：令和4年版自殺対策白書｜厚生労働省）。
私も以前、「何でも頼ってくる友人」に限界を感じていた時期がありました。
頼られるのは嬉しいけれど、それが一方通行になると自分の心が摩耗していくのを感じました。
断れない性格もあって、次第にその人の連絡が来るだけで動悸がするようになっていたのです。
それでも「嫌われたくない」「見捨てたくない」という気持ちに縛られ、なかなか距離を取ることができませんでした。
勇気を出して距離を置いたあと、驚くほど気持ちが軽くなりました。
朝起きた瞬間の重さが和らぎ、気づけば呼吸も深くなっていたのです。
誰と、どんな関係を築くかを見直すだけでも、自分を守る大きな一歩になると感じます。
選ぶべきは「長く続けられる関係」ではなく、「健やかにいられる関係」なのかもしれません。
自己成長が加速する関係性の特徴とは何か
信頼関係が自己効力感を高めるだけでなく、学びや行動にもプラスの影響を与えることは多くの研究で示されています。
東京大学の研究チームは、共通の目標を持つグループに属する人ほど、自己成長に対する意欲が高い傾向にあると発表しています（出典：東京大学大学院 教育学研究科 研究成果）。
目指すものが似ている人たちと交わることで、互いに刺激し合い、前進するエネルギーが生まれるのです。
自分を否定せず、挑戦を応援してくれる環境に身を置くことで、自然と「やってみたい」と思える瞬間が増えるのです。
周囲に「信頼できる仲間」がいるだけで、日常の選択が前向きに変化していきます。
私も、新しい資格に挑戦したとき、応援してくれる仲間がいたからこそ、最後までやり切ることができました。
勉強につまずいたとき、「それ分かるよ」と共感してくれるだけで、また机に向かう意欲が湧いてきたのです。
「こんな話をしてもいいんだ」「自分の考えを口に出していいんだ」――そう思える場があるだけで、視野が広がっていきます。
人とのつながりは、ただの安心材料ではなく、成長の土台になるのだと実感しています。
信頼関係は、孤独や迷いの中で差し込む光のような存在であり、ときに人生の方向性すら変えてしまうほどの力を持っています。
まとめ
信頼できる人間関係があるかどうかは、行動力や幸福感に大きな違いをもたらします。
ただ誰かとつながっているだけではなく、「自分を認めてくれる存在」がいることが、日々の判断や感情の安定に寄与します。
実際、国の調査でも支援ネットワークを持つ人ほど自己効力感が高く、困難にも前向きに取り組む傾向があるとされています。
一方で、関係を続けること自体がストレスになってしまう場合もあるため、自分の気持ちを正直に見つめ直す時間も欠かせません。
すべての人間関係を肯定しようとするのではなく、自分の心と体が健やかでいられる関係を選び取ることが大切です。
また、共通の目的や価値観を持つ仲間と過ごす時間は、学びを深め、成長を加速させる貴重な環境になります。
信頼されることで自分も他者を信頼できるようになる循環が生まれ、その中で新しい挑戦に向かう勇気が育まれていきます。
誰かと本音を語り合える関係こそが、孤独な心にとって最大の支えになるのではないでしょうか。
そして、そんな関係がひとつでもあることで、自分を信じる力が少しずつ育っていくのです。
日々の小さな選択を通じて、自分自身の居場所や進む方向を丁寧に整えていく。
その積み重ねが、自信となり、未来を切り拓く力につながっていきます。
