
はじめに
一度は「続けよう」と思ったことがあるのに、気づけば3日坊主。そんな経験、誰しもありますよね。
実際、厚生労働省の調査によると、運動習慣を持つ人はわずか28.7%。つまり、7割以上の人が「継続」に悩んでいるのです(出典:国民健康・栄養調査|厚生労働省)。
私自身も過去に、意気込んでランニングを始めたものの、3週間で挫折したことがあります。雨、仕事の忙しさ、体の重さ……言い訳はいくらでも見つかるのです。
けれども、ある日ふと「毎日じゃなくていい。5分でいい」と考え方を変えたことがきっかけで、無理なく習慣にすることができました。
そこから得た学びは、継続とは「頑張ること」ではなく「仕組むこと」だという点です。
本記事では、こうした現実を踏まえつつ、行動科学と信頼性の高い統計データに基づき、誰でも「続けられる力」を育てる方法を探っていきます。
続けるために必要なのは、気合や根性ではなく、“設計”と“仕組み”。
では、その具体的なアプローチとは何か、一緒に紐解いていきましょう。
継続率28.7%の運動習慣者データにもとづく目標設計と行動設計
継続率28.7%という現実から目標設計の重要性を捉える
「運動しよう」と決めた瞬間、私たちは理想に燃えてしまいがちです。
1日30分のウォーキング、週3回のジム通い……。
しかし実際には、継続できるのはほんの一握り。
厚生労働省の『国民健康・栄養調査(2022年版)』によれば、運動習慣をもつ成人の割合は男性28.6%、女性28.8%。
つまり、約7割の人が「やろうと思っても続かない」と感じているのです。
これは決して「意志が弱い」からではありません。
大きすぎる目標が、自分の現実にフィットしていないだけ。
私も以前、初日にいきなり5km走ってひざを痛めた経験があります。
靴も合っていなかったし、ウォームアップも忘れていた。
無理をすれば、心も身体も悲鳴をあげて当然です。
それからは「まずは1分、次に3分」という具合に段階的に増やしたところ、1か月後には自然と走ることが楽しくなっていました。
徐々に距離も伸び、最終的には週3回の5kmが習慣に。
継続の第一歩は、自分に“優しい”目標設計なのかもしれません。
「できた」という達成感が、次の一歩を自然に後押ししてくれるんです。
なぜ1日5分など小さなステップが継続率向上に寄与するのか
「たった5分?」と侮ってはいけません。
行動科学の分野では、“初期負荷”を極限まで下げることが、習慣化の成功率を高めるカギだとされています。
私が実践していたのは、歯磨きの直後にスクワット10回だけする、という方法。
時間にすれば1分程度ですが、この“ついで”の動作が驚くほど効果的でした。
気が乗らない日でも、「まあ1回だけやっておくか」と体を動かせるからです。
しかも、運動したという実感が、1日の満足度をじわっと高めてくれるんですよね。
実際、イギリスのロンドン大学の研究では、習慣化までに必要な日数は平均66日との報告も(出典:How are habits formed: Modelling habit formation in the real world)。
小さくても毎日続ける行動が、脳の回路を“自動化”していくのです。
ここで大事なのは「小ささ」そのものではなく、「負荷が小さい」と“脳が感じる”こと。
負荷が少なければ、習慣の維持ハードルはどんどん下がります。
たとえば、朝起きてすぐカーテンを開けるような行動。
誰も「今日はカーテンを開けるか悩んでいる」なんて言いませんよね。
そのくらい“無意識レベル”に落とし込めるのが理想なんです。
あなたも、「やる気が出たら」ではなく、「やる気がなくてもできる」を意識してみませんか?
行動を仕組みに落とし込む設計で継続を負担なく実現する
やる気がなくても動ける仕組み——それこそが「継続」の核心です。
たとえば、夜に運動しようと思っても、仕事が長引いたら崩れてしまいますよね。
私の場合、運動用のシューズを玄関の真ん中に置くようにしていました。
すると、帰宅後イヤでも目に入る。
「ちょっとだけでも」と動き出せるきっかけになるんです。
行動経済学でも、人は「選択肢が少ない環境」「意識しなくても目に入る配置」によって、行動の継続率が上がると示されています(出典:行動経済学的アプローチの実践と展望|三菱電機 Biz Timeline)。
さらに、曜日ごとにやるタスクを決めておくのも有効です。
「月曜はストレッチ」「水曜は散歩」のように、思考の負担を減らしておくと、動き出しがスムーズになります。
また、「報酬」を組み合わせることでさらに継続性が高まります。
私の場合は、運動の後にお気に入りの音楽を聴く時間を“ごほうび”として設定。
この“快”の感情が行動の記憶に残り、次回のモチベーションにつながります。
習慣化は、「意思」よりも「構造」で決まる。
あなたの生活に、ひとつ“仕組み”を組み込んでみませんか?
継続できる環境整備と習慣化メカニズムを数値で理解する
平均6,278歩/日の歩数と運動習慣の関係
「1日1万歩」という目標、よく聞きますよね。
でも、実際にそこまで歩いている人は少数派です。
厚生労働省の調査では、成人の平均歩数は男性6,793歩、女性5,832歩(2022年)で、男女平均で約6,278歩程度(出典:国民健康・栄養調査|厚生労働省)。
この現実を知ったとき、「あ、自分だけじゃない」と少し安心しました。
以前、万歩計アプリを使っていたのですが、目標に届かずにアプリを削除したこともあります。
今考えると、理想が高すぎた。
理想の目標はモチベーションになることもあるけれど、達成できないことで自己否定につながる危険性もあります。
そこで再設定したのが「平日5,000歩、休日7,000歩」という目標でした。
これがちょうどいい。
歩数が増えると、自然と気分も上がるんです。
通勤時に一駅前で降りて歩く、エレベーターを使わず階段を使うなど、ちょっとした工夫で歩数は稼げます。
私にとっては、歩くことで思考が整理されたり、創造的なアイデアが浮かんだりすることが多いんですよね。
まるで脳が深呼吸するような感覚です。
つまり、現実的な歩数目標が、気持ちと体のバランスを整えてくれたんです。
歩くという行動は最も手軽で、かつ心理的な負担が少ない運動。
だからこそ、続けるためには“正しい目標の再設計”が第一歩なのです。
行動科学が示す感情に頼らない仕組み構築の重要性
「今日は気分が乗らないな……」
そんな日は誰にでもあります。
でも、それを理由にやらない日が続くと、習慣は簡単に消えてしまいます。
だからこそ、気分に左右されない“仕組み”が必要なんです。
行動科学では、人の行動を決定づけるのは「トリガー」「ルーチン」「報酬」の3要素とされています。
この考え方は、特に習慣形成において強力なフレームワークになります。
私はこのフレームを取り入れ、朝起きたらまず白湯を飲む→靴を履く→玄関の前でストレッチ、という流れを作りました。
最初のうちはぎこちない。
けれど2週間もすれば、体が勝手に動き出すようになったんです。
“やる気”を前提にしない習慣設計は、実はとても合理的です。
トリガー(白湯)→ルーチン(靴を履く)→報酬(身体が目覚める)という流れが、毎朝の自動運転プログラムのようになっていきました。
たとえば、朝起きた直後にスマホを見ないよう、寝室にスマホを持ち込まないという工夫も、環境と行動のリンクづけの一種です。
環境と行動の連鎖が、次のアクションを自然に引き出します。
「気分」に振り回されない仕掛けが、続ける鍵になるのです。
その結果、私の朝は静かで整った時間に変わり、自分の一日を自分で舵取りする感覚を持てるようになりました。
この仕組みの力、侮れません。
週2日以上運動継続者の2割程度という実態と習慣形成戦略
「週に2日運動してますか?」と聞かれて、YESと即答できる人は少ないかもしれません。
実際、厚生労働省のデータでは、週2回以上運動を継続している人は約20%にとどまるという報告もあります。
それほど「週に複数回動く」ことは、意外と難しいんです。
仕事の忙しさ、家庭の用事、悪天候、体調不良……
やらない理由は、毎週のように押し寄せてきます。
私もそうでした。
月曜にやって、水曜にやって、金曜に……と理想を並べるけど、気づけば金曜に初回をやる始末。
気がつくと1週間が過ぎていた、なんてこともしばしば。
そこで変えたのが“連続性よりも回数”の考え方です。
1週間で2回できればOK。
月曜と木曜でも、火曜と日曜でも、どこかで2回できれば合格。
このゆるさが、むしろ継続性を高めてくれました。
さらに、やった日をカレンダーに〇をつけていくと、視覚的な“連続感”がモチベーションになる。
人は途切れたくない心理を持っているものです。
私は、カレンダーに印をつけることで「今週も自分を裏切らなかった」と感じられるようになりました。
また、予定していた曜日にできなかった場合の“代替案”をあらかじめ考えておくのも有効です。
たとえば、「木曜にできなかったら土曜の午前に振り替える」など。
こうした柔軟性のある戦略が、結果的に継続を支えてくれるんです。
あなたも、まずは「週に2回」という現実的なラインから、始めてみませんか?
成果を実感できる継続記録とモチベーション維持の科学
習慣化に平均66日かかるという科学的根拠
「習慣になるまでどのくらいかかるの?」
そんな疑問を抱いたこと、ありませんか?
2009年に発表されたロンドン大学の研究によれば、新しい習慣を形成するには平均で66日かかるとされています(出典:How are habits formed: Modelling habit formation in the real world)。
ただし、この数字は個人差が大きく、18日で定着する人もいれば、250日以上かかる人も。
この“幅”のある数字こそが、私たちに勇気をくれます。
つまり、すぐに続かなくても、それは普通だということ。
実際に私が朝ヨガを習慣化したときは、3か月近くかかりました。
最初の1か月は「今日はやめとこうかな……」という自分との戦いの連続。
けれど、不思議なことに、日々の積み重ねがある日ふと“自然な流れ”に変わる瞬間があったのです。
毎日同じマットを敷いて、同じ時間に呼吸を整えるうちに、自然と体がそのリズムを覚えていったんです。
天気や気分に左右されることなく、淡々と続けることが、いちばん大切なことだと気づきました。
最初は行動が先、気持ちはあとからついてくる。
「三日坊主だった私が3か月続けられた」という事実は、今でも自信になっています。
習慣化にかかる日数を知ることは、自分への期待値をコントロールする意味でも大切です。
「2週間でダメならもう無理」なんて、誰が決めたのでしょう?
行動に正解はありません。
自分のペースでいいんです。
焦らず、少しずつ積み上げていきましょう。
記録の可視化が継続動機・達成感に与える影響
やったことを記録する、それだけで継続率はグンと上がります。
日記、手帳、アプリ、カレンダー……方法は何でもいいんです。
私は手書きのチェックシートを冷蔵庫に貼っていました。
運動した日は赤丸、しなかった日は空白。
最初は空白が多くて落ち込みました。
でも、続けているうちに赤丸がじわじわ増えていきます。
赤丸がひとつ、またひとつと並んでいくたびに「自分やるじゃん」と思えるようになってきたんです。
それが嬉しくて、次の日も「赤をつけたい」と思うようになったんです。
人は“見える進捗”にモチベーションを感じる生き物です。
ゲームのレベルアップ、勉強のマーカー、貯金のグラフ……
全部「可視化された変化」があるから続けられるんです。
特に、達成したことが目に見える形で残ると、「自分はやってきた」という自信に変わっていきます。
行動経済学でも、“可視化された実績”は人の継続意欲を強化する効果があるとされています。
その記録は、単なる数字ではなく、“努力の証”なのです。
これは習慣というより「自分との約束の履歴」なんです。
破るより、守りたい。
だから続く。
そして気づけば、それはもう“記録しないと落ち着かない”レベルになっているかもしれません。
可視化された積み重ねは、あなたに静かに誇りを与えてくれるのです。
動機分析:体力向上・体型維持・健康改善が継続理由の上位
「なんのためにやってるのか、わからなくなる……」
そんなとき、立ち止まって“動機”を振り返ることはとても重要です。
ある調査によると、運動を続けている人の主な理由は「体力の維持・向上」「体型の維持」「健康診断対策」が上位を占めていました(出典:健康教育学研究 第27巻3号)。
つまり、続けている人ほど、“目的”を明確に持っているということ。
目指す方向があるから、迷っても戻ってこられるんです。
私の場合は、肩こりの改善と、夜よく眠れるようになりたいという思いが強かった。
けれど、気づけば「体力をつけたい」や「もっと集中力を高めたい」など、目的が次々に変化していったんです。
でも、それが思ったより早く効果として現れたことで、「このまま続けたい」と思えるようになったんです。
結果が出ると、人は行動に意味を見出します。
ただし、動機は変わってもいい。
最初は「痩せたい」だったのが、途中から「ストレス発散」に変わることだってある。
その変化はむしろ健全です。
ライフステージや生活環境に応じて、動機は自然にシフトしていくものだから。
目的が変化していくのは、続けている証拠でもあります。
あなたは、何のために今、その習慣を続けようとしているのでしょうか?
たまには静かに、自分に問いかけてみてください。
まとめ
習慣を続けることは、決して一夜にして実現するものではありません。
平均66日という科学的根拠や、可視化された記録の効果、明確な動機の存在が、行動を支える土台となってくれるのです。
私は「やる気が続かない」と悩んでいた頃、自分を責めることばかりに時間を使っていました。
でも、行動科学やデータに触れてからは、「仕組みで続ける」考え方に変わったんです。
毎日5分でもいい、やったことを記録する、小さな目的でも自分のために持つ。
そんな積み重ねが、やがて“習慣”という大きな成果に変わっていきました。
あなたの続けたいことがどんなことであれ、大切なのは「続けられるよう設計する力」。
意志の強さではなく、環境や流れを味方にすること。
そして、失敗しても自分を否定しないこと。
一度立ち止まっても、また始めればそれでいいのです。
完璧を求めるより、“ちょっとだけ続ける”ことに価値を見いだしてみませんか?
続ける力は、誰の中にも眠っています。
今日、その一歩を踏み出すだけで、あなたの明日は少しずつ変わり始めるはずです。