
はじめに
「おしゃれな部屋にしたい」と思いつつ、手をつけられないまま何年も経っていませんか?
毎日疲れて帰る部屋が、なんとなく雑然としていて、心が落ち着かない——そんな声を、私は数えきれないほど聞いてきました。
30年以上この業界でインテリア提案をしてきましたが、「家にいる時間を豊かにしたい」という願いは、どんな時代でも変わりません。
今回お届けするのは、いわゆる“カフェ風”と呼ばれる居心地の良い空間づくりの完全ガイド。
ナチュラル素材、間接照明、観葉植物、そしてウッドやヴィンテージ家具をどう生かすか?
インスタや雑誌を真似したけれど、何かが違う…そんな失敗をしてきた方にも、新しい視点をお届けします。
少しの工夫で、心が「ふうっ」と緩む場所が完成する。
それは理屈ではなく、肌感覚でわかるようになります。
さあ、自分だけの“心のオアシス”を、今日から作ってみませんか。
色使いと照明の工夫で心が休まる理想のリラックス空間を実現する
間接照明とペンダントライトの配置テクニックで柔らかい光を演出する
夜、部屋に灯る光の色で、その日の疲れが癒やされることもあれば、逆にイライラを引きずることもあります。
私自身、20代の頃はスポットライトのような白い直光がかっこいいと思い込んでいて、部屋がどこか緊張感だらけでした。
ですが、あるお客様の家で見た「壁に反射する淡い光」を体験したとき、価値観がガラッと変わりました。
ふわっと優しく包まれるような光があるだけで、空間全体の空気が穏やかになるのです。
照明は、インテリアにおいて“最後の魔法”とも言われています。
天井からのメイン照明は最小限にし、足元や壁沿いに小さなライトを点在させるだけで、空間の深みがグッと増します。
最近では、LEDの調光機能付きスタンドライトや、USB充電式のコードレスランプも人気です。
費用も2,000〜5,000円程度で手が届く範囲になってきました。
ただし、明るければいいというわけではありません。
大事なのは「どこに、どんな目的で、どれくらいの明るさが必要か?」という問いかけです。
たとえば、読書をする場所には手元にしっかり光を落とし、テレビ周りは柔らかい間接光で包むのが理想的です。
光と影がつくるコントラストこそが、カフェ風インテリアの奥行きを演出してくれます。
あなたの部屋にも、灯りの再構築という変化を加えてみてください。
それだけで、何気ない夜の時間が、ご褒美のように感じられるかもしれません。
ベージュ・グリーン・ブラウンを組み合わせて落ち着きのある配色を整える
「なんだかこの部屋、落ち着かないな」
そう感じるとき、意外にも“色”のせいであることが多いのです。
実際、派手な原色や白すぎる内装は、心を無意識に緊張させてしまうことがあります。
私は以前、真っ白の壁とモノトーンの家具で統一した部屋に住んでいました。
見た目はスッキリしているはずなのに、どこか空虚な感じがして、長時間いると逆に疲れてしまったんです。
その後、壁にベージュの布を垂らし、グリーンのクッションを加えてみたところ、不思議な安心感に包まれました。
ベージュは「砂浜のような温もり」、グリーンは「森林浴のような癒し」、そしてブラウンは「大地のような安心感」をもたらしてくれます。
この3色をベースに、小物でアクセントカラー(テラコッタやマスタードイエローなど)を加えると、空間にリズムが生まれます。
最近のトレンドでは「アースカラー」と呼ばれ、自然界にある色を多く取り入れることで、心理的安定が得られるという研究も進んでいます。
特にグリーンには、目の疲れを和らげ、ストレスホルモンを減らす効果があるとされています。
インテリアは、五感すべてに訴えかけるもの。
視覚から感じる穏やかさが、毎日の暮らしに小さな余白を作ってくれます。
配色ひとつで、自宅の空気感はここまで変わるんだと、体感してみてください。
木目・ウッド素材を活かして視覚的にも心が和らぐ空間を作る
「木のぬくもり」って、どうしてあんなに安心するのでしょうか。
無垢材のテーブルに触れたときの、あの“すべすべ”“ざらっ”とした感触——それだけで心がほぐれていくのを感じます。
ウッド素材の家具は、決して高価である必要はありません。
合板でも、表面がリアルな木目調であれば、視覚的な効果は十分に得られます。
私が実践してよかったのは、テレビボードとローテーブルを木製に替えたこと。
それまでは金属とガラスで統一していたのですが、冬は冷たく、どこか無機質な印象でした。
ウッドに切り替えた途端、空間が“ほんのり暖かく”なったような感覚が広がりました。
木は、呼吸している素材でもあります。
湿度を調整し、空気を柔らかく保つ効果があると言われています。
しかも、木目の揺らぎは脳をリラックスさせる視覚的刺激になるという報告もあります。
ナチュラルウッド、ウォールナット、オーク材など、色味や模様もさまざま。
選ぶときは、「自分が手で触れたくなるかどうか?」を基準にするのがおすすめです。
目で見るだけでなく、肌でも感じられる素材は、暮らしに静かな幸福感をもたらします。
そして何より、木には“時間を重ねる楽しみ”があります。
色が少しずつ深まり、使うたびに風合いが増していく——それは、あなたの暮らしと一緒に育っていく証でもあるのです。
「帰りたくなる部屋」その始まりは、きっと木のぬくもりかもしれません。
家具と雑貨でカフェ風の世界観と心地よさをトータルにデザインする
ヴィンテージ家具とアンティーク雑貨で奥行きのある雰囲気を演出する
古いものには、語りかけてくるような魅力があります。
それは単に“古い”ということではなく、使い込まれた傷や色あせが、そのまま時間の積み重ねを物語ってくれるからです。
カフェ風インテリアにおいて、ヴィンテージやアンティークの家具は、その世界観を一気に深めてくれる存在です。
たとえば、古びた木のカウンターや、アイアン脚のスツールをひとつ加えるだけで、空間が引き締まり、どこか懐かしくあたたかい空気が流れます。
あるとき、骨董市で手に入れた木製のキャビネットを自宅に置いたことがありました。
引き出しの取っ手が少し緩んでいて、ガタッと音を立てながら開く感じが、なぜかとても愛おしかったのです。
新品のような完璧さではなく、「味がある」「空気を変える」そうした存在感こそが、カフェ風には欠かせません。
最近ではネットでも簡単に購入できますが、できれば現物に触れて「ピンとくる」感覚を大切にしてほしいと思います。
空間にひとつでも“過去の記憶”が加わると、その場に滞在する時間の質が変わります。
そして、訪れた友人が「この部屋、なんか落ち着くね」とつぶやく瞬間が、最高の証明になるでしょう。
パーソナルチェアとファブリックアイテムでくつろぎの時間を充実させる
カフェのソファ席に腰を下ろした瞬間、つい長居してしまった経験はありませんか?
それと同じように、自宅にも“離れたくなくなる椅子”がひとつあると、日常の幸福度が驚くほど上がります。
私は数年前、思い切ってパーソナルチェアを購入しました。
読書も昼寝も、時には考えごとにふけるにも、その椅子は私の「小さな避難所」になってくれています。
ファブリック選びも、空間の印象を大きく左右します。
ふんわりとした布張りのクッション、手ざわりのいいブランケット、リネンやコットンの軽やかなカーテン——これらは単なる装飾品ではなく、心地よさを具体的に形づくる要素です。
特にカフェ風インテリアでは、色味や質感に統一感を持たせることで、空間全体が“ひとつの世界”として成立します。
もちろん、「全部を買い換えなきゃ」と考える必要はありません。
一枚の布、一脚の椅子、ひとつのクッションからでも始められます。
“ここが自分の居場所だ”と感じられる場所は、広さではなく、心地よさの密度で決まるのです。
あなたの一日がふとほぐれる、そんな場所が家の中にありますか?
見せる収納とモノトーン雑貨でおしゃれ感と実用性を両立させる
カフェの魅力のひとつに、“生活感があるのに整っている”という絶妙なバランスがあります。
この感覚を自宅に取り入れるには、収納の見せ方と雑貨の選び方がカギになります。
私は以前、「とにかく隠せばOK」と思い込み、なんでも箱や棚に押し込んでいた時期がありました。
けれども、逆にそれが“ごちゃつき”や“圧迫感”の原因だったのです。
そこで取り入れたのが、見せる収納とモノトーン雑貨。
白・黒・グレーを基調にした収納ボックスや、ウッド素材と組み合わせた棚に置くことで、整理整頓そのものがインテリアになりました。
特におすすめなのが、同系色で統一されたキッチンツールやバスケット。
視覚的ノイズが減り、空間に呼吸が生まれます。
とはいえ、何でも見せれば良いというわけではありません。
「見せるべきもの」と「隠すべきもの」を選び抜く視点こそが、センスの真髄だと実感しています。
雑貨も、ひとつひとつ意味を持たせること。
たとえば、旅先で買ったコースターや、祖母から譲り受けた花瓶など、ストーリーのあるアイテムが空間に命を吹き込みます。
散らからない工夫は、決して窮屈さを生むためではなく、心を自由にするための技術です。
収納と装飾、その境界線を曖昧にしたとき、家はもっと楽しくなります。
自然素材と植物の力で空間に癒しと調和を取り入れるテクニック
観葉植物とグリーンを効果的に配置して視覚と心理をリフレッシュする
ふと目に入るグリーンが、気分をふっと軽くしてくれることがあります。
これは偶然ではなく、植物が放つ“視覚の癒し”には確かな力があるからです。
私はストレスがピークだったある時期、部屋の片隅に小さなパキラを置いたことがあります。
それだけで、朝の空気が違うように感じられたのです。
観葉植物は、ただの装飾ではありません。
生きている存在が空間にあることで、人の心理に安定感や安心感がもたらされるという報告もあります。
特に、葉が広くて柔らかいものは、目に優しく、心をゆったりさせてくれます。
置き方にもコツがあって、部屋の“視線の終点”に配置すると、視覚的なバランスが整います。
リビングならソファの横、寝室なら窓際。
また、吊るすタイプのグリーンを取り入れると、空間に立体感が生まれて、より動きのある印象になります。
初心者には、ポトス、サンスベリア、シュガーバインなどがおすすめ。
手がかからず、育てる楽しみも得られます。
水やりの時間が、“自分のための小さな儀式”になるかもしれません。
どんなに小さくても、植物は空間に呼吸を与えてくれます。
あなたの部屋に、ひとつ緑を加えてみませんか?
ナチュラル素材の棚やカウンターキッチンで自然な温かみを加える
木の質感に包まれた空間は、なぜか心が落ち着きます。
これは心理的な安心感だけでなく、触覚的な心地よさが加わるからです。
たとえば、ラバーウッドやパイン材の棚は、手触りが滑らかでありながら温かみもあるため、視覚と触覚の両方に訴えかけてくれます。
私は以前、アイアン素材の棚から、木製に変えたとき、その変化に驚きました。
同じ場所なのに、空間全体がやわらかくなったような感覚がしたのです。
特にカウンターキッチンは、ナチュラル素材を取り入れる格好の場所です。
人が集まるところにこそ、木の温かみを使うと、自然と会話もやさしくなります。
また、見た目の軽やかさを求めるなら、オープンシェルフにするのも一つの手です。
お気に入りのカップやボウルを並べて“見せる収納”にすると、日常の風景がちょっとしたディスプレイに変わります。
木材の節や色ムラも、むしろ個性として活かしてください。
完璧を求めるより、「味がある」と思える視点が、空間に深みを加えてくれます。
ナチュラルな素材は、時が経つほどに美しくなる——そんな育てる喜びも楽しんでみてください。
タイル・レンガ・コンクリート素材でナチュラル×モダンなミックス感を演出する
自然素材=素朴、というイメージを持っていませんか?
実は、ナチュラルとモダンは組み合わせることで、互いの魅力が引き立ちます。
私はあるカフェの内装を担当したとき、木とコンクリート、そして白いタイルをミックスした空間をつくりました。
完成した空間は、温かみとスタイリッシュさが同居し、訪れた人々の反応もとても良かったのを覚えています。
たとえば、床材にモルタル風タイルを使い、棚や天板に無垢材を加えるだけでも雰囲気が変わります。
レンガ調の壁紙を一面だけ使う“アクセントウォール”もおすすめです。
こうした異素材の組み合わせは、空間にリズムと立体感を与えてくれます。
大切なのは、どこかに“抜け”をつくること。
全体が木だけ、またはコンクリートだけだと、重くなりすぎてしまいます。
そのバランスをとるためにも、ナチュラル素材と無機素材をほどよく散りばめると良いでしょう。
小さな面積から始めれば失敗も少なく、挑戦しやすいです。
空間にちょっとした“意外性”を持たせたいとき、異素材ミックスはとても有効な手段です。
あなたらしい感性を反映した、唯一無二の空間が生まれるはずです。
まとめ
部屋の空気を変えるというのは、決して大げさな表現ではありません。
少しの色味の調整、照明の工夫、素材の選び方。
そのひとつひとつが、私たちの心と体に大きく影響を与えているのです。
忙しさに追われて、ただ寝るための場所になってしまった家。
でも、そこに光とぬくもり、自然の気配を少しずつ取り戻すことで、「帰りたい場所」が生まれていきます。
私は30年間、数え切れないほどの部屋を見てきました。
完璧な間取りや高級な家具よりも、「その人らしさ」がにじみ出た空間ほど、長く愛され続けていました。
今回ご紹介したカフェ風インテリアは、決して難しい技法ではありません。
観葉植物をひとつ置くこと。
照明の向きを変えてみること。
お気に入りの布を一枚取り入れてみること。
その積み重ねが、かけがえのない空間へとつながっていきます。
自分自身を癒やす時間を、暮らしの中にしっかり確保する。
そのための“居場所”を、自分の手で少しずつ育てていく。
それは、何かを削る努力ではなく、日々を丁寧に生きるための小さな投資です。
無理なく、でも確実に、自分らしさを重ねた空間が、きっとあなたの未来を少しずつ変えてくれるはずです。
さあ今日、まずはひとつだけ、あなたの部屋に“心がほぐれる瞬間”を加えてみませんか。